ぱらだいまー


あのやたらめったら小さい筆箱、わかるかな。ペンが二、三本も入ればいい方だろうというような、あの窮屈そうな筆箱だ。


今日今さっきまで、あの手の筆箱はその持ち主が
「おれは本当にいい物しか身につけないぜ」
というクソ生意気なメッセージを周囲に伝えるためだけに存在しているのだと思っていた。


シャーペンも、ボールペンも、消しゴムも、色ペンも、蛍光ペンも必要なのに、あんな選ばれし物のみを入れて下さいみたいな面をした筆箱なんか誰が使うのだと思っていた。


だが就活を始めて気づいた。
学生以外の人種は、大抵シャープペンシル一本と、ボールペン一本、消しゴムがひとつあれば、事足りてしまうということに。

今まで使っていた筆箱だと必要な物に対して無駄に大きいのでかえって邪魔なのだ。


昔嫌いだった食べ物を、大人になってから食べられるようになるみたいな現象は、文房具の世界でも起こることらしい。