私は生まれてこの方、
父の仕事の都合で住居を転々としてきました。
ですから、この場所が私の故郷なのだとはっきり言える場所はありません。この先父と母が亡くなったら、私は本当に帰る「場所」を失います。
私の故郷は、父と母の暮らすところなのです。
私たち家族には、思い出を残した家がありません。
引越しをするたびに、思い出の一部は捨てていかねばならないのです。
太宰治の「帰去来」を読んでいて、
帰る場所があることを、羨ましく思ったのでした。
いずれは帰る場所がなくなってしまうのだと思うと、
父、母、妹達を今よりもっと大切にせねばいけないなと思わずにはいられません。