裏切り食堂
ひとりで食べるご飯ってーのが、
ぼくは本当につまらんのです。
料理に対する感想を言い合う相手がいないのもそうだけれど、
何より意外性がないのが、その理由です。
だって、
何から何まで自分で決めるじゃない。
食べるものとか、それ作る食材とか、
それをどう調理するか、火の加減は? 味の濃さは?
全部自分で決める。
そこに不確定な要素はなにひとつありません。
予め想定した料理ができあがり、思ったとおりの味で、何の裏切りもなく、ただただ美味しかったです、で終わり。
なんとも味気ないじゃないですか。
しかもその料理、誰のために作っているかと言えば自分のためです。
感想を言ってくれる人もいない。
ひとりで食べるご飯は、なんというか、お腹を何かで満たす作業のようにさえ思えます。
ぼくは学校帰りに、今日の夕飯はなんだろうとわくわくするあの感じが好きでした。
それでたまたま夕飯が自分の食べたいものだった時なんか、めちゃくちゃ嬉しかったりしたもんです。
自分はすごく食べたいものだったけど、他の家族はそうでもなかった時の、
あのテンション差のある会話も好きでした。
予想外がうんぬんと言いましたが、やっぱり料理を食べながら、それに関してあれこれ話せればぼくはそれが一番楽しいのかもしれません。
家に帰るとご飯が待ってる生活を、そしてそれについてあれやこれやと話すことのできる生活を、今後送ることがあるのかなあと思うとちょっと涙が出そうになりますが、あると信じて明日も生きてゆきます。