悪習慣は

一人暮らしを始めると、

今まで爪を噛んでいた事の方が嘘だったかのように、普通に爪切りで爪を切るようになった。

 

幼稚園の時分からずっと親にたしなめられていたにも関わらず

治らなかったので、一生噛み続けるのかとぼく自身思っていたから、心底驚いた。

 

よく原因だと言われる

親の愛の不足は感じたことがないし、

欲求不満なんかは今も昔もそうだし、

ストレスはなんなら今の方が感じているくらいだと言うのに。

きれいさっぱり、あの悪習慣は消えてしまった。 

 

ああでも、

もうひとつの唇を触ってしまう癖の方は、

ここ数ヶ月で治る兆候を見せていたのだけれど、

あえなく復活してしまったか。

 

とは言え爪噛みにしろ唇触りにしろ、

治そうと思っても治るもんではなく、

治るときにはぼくのように何故か治るものだと思っているので、

あまり気にしてはいない。

それらを自傷行為だから今すぐやめろなんて大袈裟なことを言う人には、

放っておけよと思ってしまう。

 

さっき挙げた3つの原因だって、

自分が気づいていないだけで本当は感じていたのかもしれないし、

その不足を埋めるために爪を噛んで平静を得ていたのだったら、

自傷行為だろうがなんだろうが、その人には必要なものなのだから。

 

不足が埋まった時、

不足に自分の中で折り合いをつけることができた暁には、

爪噛みはその役目を終えて、消えていく。

 

爪噛みでないものにせよ、

自分の中で治そうと思ってもどうしても治らない癖や、

習慣というのは、多分自分がバランスを保つためには必要なものなのだろう。

 

そうした癖、習慣の上に胡座をかいていてはいけないと、もちろん思うけれども、あまり深刻にとらえて無理に治そうと考える必要もないのではないかと思うのだった。かえってストレスになりそうだ。