3度めのさよなら
先週の土曜に父方の祖母が亡くなり、
葬儀を終えて今しがた帰ってきた。
長風呂が好きだった祖母。
風呂で温まったあとは風呂掃除を終えてからあがってくるのが恒例で、
いつも2時間くらい風呂場にいたのをよく覚えている。
亡くなったその日も、同じように風呂掃除をしていたらしい。
高いところは危ないからと母からも、父からも、ぼくも、妹も言っていたのだけど、
高い位置にあるタイルの拭き掃除をしていたときに、足をすべらせて、そのまま帰らぬ人となってしまった。
一緒に暮らしていたら、こんなことにはならなかったかもと、母は言っていた。
葬儀を終えた後、祖父と祖母の家だった家に行った。
キッチンには洗い終わった皿が綺麗に並べてあって、机の上には外した補聴器が置いてあった。祖母も、まさかその日死ぬなんて自分でも思ってなかっただろうと、思う。
現にその日も、夜まで近所の人たちとおしゃべりをしていたらしいから。
また明日と別れて、それがそのままになってしまったと、弔問に来てくれたご近所さんが言っていた。
祖母は100歳まで生きにゃいけんねと母にも言っていたらしいし、
正月に会いに行ったときも、一緒にお酒を飲んだりして、元気そうな姿を見ていたこともあって、何が何だかという感じだった。
出棺のとき、父が、
父の祖父の出棺の時もそうしていたように、
祖母の額に手をあてて、ゆっくりとなでる姿を見て、そこでぼくは初めて涙が出た。
父はこれでひとりぼっちになってしまったのだ。
ぼくは父が普通に泣いている姿を、20何年生きてきて、初めて目にした。
夏や正月に、熊本を訪れる理由も、これでなくなってしまったんだなあ。